架け橋大賞記録集

【第2回 架け橋大賞病院賞】 都立駒込病院

駒込病院アピアランスケアチームの歩みと未来 ~外見と心に寄り添い隊~

がん・感染症センター都立駒込病院
アピアランスケアチーム代表
外科(乳腺) 本田 弥生

がん医療と職場の架け橋(BCC)大賞が5年目を迎えられるとのこと,事務局の皆様におかれましてはがん治療をおうけになっている患者さんのサポートにご尽力を継続され,私個人としましても非常に感銘を受ける次第であります.また,当院は第2回がん医療と職場の架け橋大賞に参加させて頂きましたが,さらに今回このような執筆の機会を頂戴し大変感謝しております.ありがとうございます.

当院は32の診療科と815病床を備えた都道府県がん診療連携拠点病院としてさまざまながん患者さんにがん治療を行っています.抗がん治療に用いる薬剤には複数の副作用があり,脱毛,皮膚,爪の変化など患者さんの外見に変化をもたらすものも多く,患者さんの精神的な苦痛を招くことも多いことが知られています.これらの副作用を懸念し,必要な抗癌剤治療を拒否されてしまう患者さんもいます.また,抗癌剤治療を行った患者さんでは,治療前と外見が変化してしまったことで,他人の視線を気にするようになり社会とのつながりを持つことに躊躇が生まれてしまうこともあります.そして特に就労に際しては,外見の変化は心理的に大きな支障となると思われます.しかしながら,数年前の駒込病院では外見の変化のケア,心理面や就労支援など総合的にサポートが患者さんに提供できていない状況でした.

2015年に院内のQuality Control (QC)活動の一環として抗癌剤の外見的な変化のケアを行うことを目的に医師,看護師,薬剤師,医事課,院内美容室など他職種からなるアピアランスケアサークル(外見と心に寄り添い隊)の立ち上げを行いました.当初は「アピアランスケア」という言葉も院内では根付いておらず,まずは「アピアランスケア」を周知するという段階から始まりました.当院のアピアランスケアチームの特徴としましては,医師,看護師のみならずさまざまな職種で構成されているのですが,最初に院内でアピアランスケアの基本を立ち上げされたのは,院内美容室の当時の是枝店長でした.本来は医療職ではない美容師が一番に患者さんのことを考え,アピアランスケアを院内に広げようと努力されていたことは驚きとともに,非常に素晴らしいことだと思いました.

当時アピアランスケアサークルの立ち上げにかかわられた堀口医師は現在,当院を退職されましたが,アピアランスケアの当院での普及に努力をされていました. 第2回がん医療と職場の架け橋大賞も堀口医師が発表をされ,「架け橋大賞病院賞」を受賞されご活躍いただきました.当院のアピアランスケアサークルの立ち上げから活動を通しての社会貢献をアピールされ,このように評価していただいたことで,他のメンバーや病院職員もより意識が高まったと思います.アピアランスケアという言葉も当初は院内職員に4割弱の認知度でありましたが,現在は8割以上の認知度を保っております.私を含め数名は立ち上げメンバーと入れ替わっておりますが,引き続きアピアランスケアの普及にメンバー一同で頑張っております.また,職員の次は患者さんに知っていただくために、院内に掲示版を掲げたり,パンフレット作成を行ったり,患者さん向けのイベントを行ったりしました.また,患者さんが外見の副作用に関して質問をしやすいよう,窓口を決め(院内美容院,看護相談,サポートセンター)気軽に相談していただける体制を整えました.

特に私が専門としております乳がんの患者さんは女性が大半で,特にAYA世代の年代から社会的に大きな役割を担う年代の方たちも多いというのが事実であります.仕事をお持ちの方,主婦の方,さまざまな社会との繋がりを必要とする方が多く,アピアランスケアが欠かせないのではないかと思っております. 多くのご施設ではアピアランスケアを担当される職員は看護師がメインとなることも多いとは思いますが,当院では他職種で患者様と関わることで,患者さんが一番困っていることを引き出し,解決に導ける可能性があるかと思っています.

私たちのチームでは年1回美容の専門家をお招きさせていただき,がん治療中の患者さんにウィッグ,頭皮,皮膚のケア,お化粧の方法や爪のお手入れなど対面で実技とともに説明を受けていただくイベントを開催しております.ただし,現在はコロナ禍のなかで,チームの会議や,患者さんとのイベントなど行うことが難しく,大々的に活動が出来ない状況ではあります.しかし,アピアランスケアチームとしましては,外見のケアを通して常に患者さんの心と寄り添い,患者さんの社会との繋がりを支援できるよう努力してまいろうと思っております.また,同様に患者さんのためにさまざまなサポートにご尽力される他施設の皆様との情報や意見交換を通し,当院としましてもさらに患者さんに還元できるようなサポート体制を構築できるように,と思っております.是非,多岐にわたり多くの皆様よりご指導をいただければと思います.今後ともどうぞよろしくお願いいたします.