架け橋大賞記録集

BCC巻頭言

                                         

 順天堂大学医学部乳腺腫瘍学講座 (BCC代表) 齊藤光江

順天堂大学衛生学講座前教授の横山和仁先生からのご支援を受けて、2015年5月に立ち上げたのが、がん医療と職場の架け橋BCC(Bridge between Clinic & Company)のチームとその主な行事「架け橋大賞審査会」(第1回は2016年11月23日勤労感謝の日)でした。それまでも個人的に大学病院において、がん治療と就労の支援は必須と考えておりました。しかしながら、個々の患者さんの就労に立ち入ることは、プライバシーの領域でもあり、病院側だけで両立支援をする困難さを感じておりました。おそらく同様のことが、職場側にもあることが予想されました。どんな病気を患っており、どのような治療を要するのかは、個人情報に属し、全てを職場に伝えていないことは、想定されましたし、またすべてを知らせる義務も無いわけです。そんな中で、がん治療に携わる医療者に、何ができるのか?それを考えた時、個々の患者ではなく、癌であることをカミングアウトしている患者さんに、職場として何ができるのか?あるいは、将来患うかもしれない職員のために、職場は病院に何を求めるのか?病院と職場の間を取り持つ支援団体や社労士は?病院ではどの部署の誰がその支援にあたれるのか?職場では、産業医なのか、人事なのか、上司なのか?など、職場と病院とその中を取り持つ職種で、話し合うテーマが沢山浮上して参りました。そこで立ち上げたチームBCCは、まず手始めに、2015年3月5日に第一回目のシンポジウムを開催し、社会に向けて問題提起をしました。その後、良い試みをしている病院、職場、橋渡し団体に話を聞いてみようということになったという経緯です。

横山教授ご退官後は、同大学公衆衛生学講座准教授の遠藤源樹先生のご支援を受けて継続し、COVID19感染の兆しも全くなかった2019年11月17日に開催した第4回審査会までに、毎年、最優秀賞、Clinicもしくは病院賞、事業場もしくは企業賞、支援団体もしくはC2C賞を受賞されたグループは19にのぼりました。2020年は、新型ウイルス感染症流行下で、第5回審査会を開催することが憚られました関係で、5周年という節目であることも意識し、これまでの受賞グループの方々の協力のもと、審査員(癌の臨床医、産業医、看護師、サバイバー、企業人事、社労士、ビジネススクール教員ら)で振り返りの会をオンラインで開きました。受賞グループの方々には、受賞後の活動についてご報告いただき、チームBCCの今後の活動の方向性を考える大切な資料とさせていただきました。皆様のお許しを頂いて作成いたしましたのが、この記録集です。架け橋大賞審査会を、一大学内の閉じた活動に終わらせないため、また各事業場の知財権の侵害にならぬよう配慮し、公開できる良い試みを社会と共有させていただく仕組みづくりを将来の目標といたしたい所存です。今回、コロナ禍の中、大変な不安に見舞われながらもご協力下さったすべての団体の皆様に、心より感謝の意を表します。そして、今後更に患者さんが治療と仕事の両立を果たしやすい、成熟した社会創成に向けて共に力を携えて行けますようにと願います。

末筆ながら、サバイバーの方々のコロナ禍での心と体の安定を心よりお祈りしております。